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Stanford MBA 心の旅路

Stanford大学でのMBA(Stanford GSB)留学に奮闘する、外資系経営コンサルティング・ファーム勤務の若者の心の日記blog。 コンサルティングの仕事、MBA受験からスタンフォードGSB合格、スタンフォードMBA生活、帰国にいたるまで。

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マイアミの湿地帯にてEthicsの授業で、有名なフリードマンの論文を読んだ。企業の社会的責任は、株主への利益を最大化することだという、アメリカの株主資本主義の考え方を支える大きな柱となっている思想だ。私はこの考え方には否定的だが、アメリカらしい考え方なので、簡単に紹介したい。

フリードマンは、「企業の社会的責任は、株主への利益を最大化することであって、社長・重役・管理職・従業員などの企業サイドの人間が、株主への利益還元以外の社会的貢献を考えるのは筋違いである」と論じる。その理由として、フリードマンはおもに3つの理由を挙げている。


1.株主のお金を使って、株主が欲しない社会貢献を考えるのは泥棒と同じ
企業は株主のものなので、株主への利益を最大化するのが企業の役割。社会貢献にお金を使うのは個人の自由だが、それは企業活動の外で個人的にやるべきであって、企業として株主(他人)のお金を使って社会貢献(温暖化対策、地域の雇用確保、貧困解決への寄付など)を行うのは筋違いだと論じる。逆に、株主の意思が明確で、株主の目的が完全に社会貢献であるなら、企業は社会貢献を行うべきだと論じる。ただし、通常の複数株主を持つ営利企業であるならば、お金の出し手である株主により多くのお金を返すために企業活動を行うべきであって、勝手に余剰利益を使って株主以外にお金を提供するのは背信行為である。社会貢献は、企業での労働とは別に企業の外で個人が個人の意思で行うべきという考え方だ。

2.社会福祉実現のための資金源として政府が使う税金があるのであって、企業側が重複して「税金」(=社会貢献)を納めるべきではない
税金という仕組みは、政府が企業から利益の一部を取り上げて社会福祉実現のために使うという仕組みである。税金の調達と政策の実行は官僚組織が行うべきであって、企業は利益を稼いで税金を納めるのが役割分担である。企業側が利益を社会貢献に投資するのは、この原理を壊す考え方であり、本来税金に回るはずの余剰利益を企業が勝手に使いこむのは非合理的である。税金を社会福祉のためのコストを税金とするならば、企業は二重に税金を支払っていることになり、それは株主価値最大化の観点からも、政府と企業の役割分担の観点からも理にそぐわない行為であると論じている。

3.企業人は自社について長期的視野で考えるのは得意だが、社会貢献など外部環境について考えられる能力を備えていない
企業というものは自社内については極めて長期的、合理的に物事を見て考えられるが、社会全体の問題を長期的、合理的に考える能力は極めて乏しい。そうだとすると、企業は自社の株主への利益最大化だけをしっかり考えるべきであり、社会全体の問題に手を出そうとすべきではないと論じている。

スタンフォードにてこれらの考え方の大前提となっているのは、企業は株主の持ちモノで、企業経営の目的はお金を提供してくれた株主に最大限のお返しをするというものだ。この前提があるからこそ、株主が欲しない社会貢献を勝手に考え、株主への利益を減少させるのは「背信行為」ということになる。また、アダム・スミスの唱えた「神の手」理論がある故に、企業が株主利益を最大化しようと努力すれば、結果として社会全体の福祉に貢献する(神の手が調整してくれる)ということになっているのだ。

アカウンティングやファイナンスの授業の中でも、この考え方が理論のベースとして取り扱われる。「企業は株主の持ちモノである」という考え方を前提として、その上にいろんな理論を学んでいくのだ。「こういう考え方もある」ではなく、「企業は株主のものである」という断定調・事実調で授業が進むものだから、特に疑問を抱かない学生は「そんなものだ」と洗脳されてしまうだろう。最近チベット問題を中国人学生と議論した際にも感じたのだが、教育というのはパワフルだなぁと思う。

企業は誰のもの?企業の目的は何?
「企業は株主のもの」「企業の目的は、株主価値を最大化すること」というのがMBA的な模範解答であろう。ただ個人的には、「企業はステークホルダー全員(従業員、顧客、地域住民、サプライヤー、管理職、重役・社長、株主等)のもの」であり、「企業の目的は、ステークホルダー全体の利益をバランスしながら社会の発展に寄与すること」という方がピンとくるし、美しいと思う。日本の企業経営が、このような企業経営だとは言わないが、アメリカ型の「株主価値最大化経営」に比べると、もう少し「あいまい」に、各者の利益のバランスを取りながら会社の舵と取っているように思える。

ニューオーリンズの被災地域株主は基本的には会社の具体的な経営には興味がなく、むしろ短期的なリターン向上に魅力を感じる傾向が強いだろう。従業員の給与を削り、株主利益のためにバサバサと解雇をした結果、従業員のモチベーション、ロイヤリティ(&生活安心度)は非常に低水準のものになるだろう。株主価値を毀損すると計算されたプロジェクトには投資をせず、また長期的・不確実な分野に投資をするよりは自社株買い、増配をして株価を吊り上げた方がよしとされる。ファイナンス理論や人間の脳みそはそんなに未来を精緻に計算できるほどよくできてはいないので、結局企業が本当に継続的に成長していくには、ある程度「不確実だけど長期的には花を咲かせるかもしれない」分野にも種を捲いておくことが重要だと思うが、この株主資本主義は、短期的な経済利益を株主に還元することに重点を置く結果、長期的、不確実な投資は削られ、企業はますます「効率的」な姿になっていく。株主への利益還元で株価が上がれば、株主のみならず、経営者も膨大な利益を得ることになる。経営者も、将来の経営者候補(MBAに来るような人たち)も、数年で企業を辞めることを前提に、自分がいる期間に短期的に株価を上げるような努力をし、またはレジュメにいいことが書けることだけを考え、職を転々(キャリア・アップ)とする。いくら株価が継続的に上がっても、いくら企業が財務上「効率的」になっても、従業員のモチベーション・文化・スキルや長期的投資といった将来につながる本質的な部分をおろそかにしているならば、継続的に企業・経済が成長し続けることは難しい気がする。

アメリカに来て、シリコンバレーに来て、スタンフォード・バブルの渦中で「株主価値最大化経営」を学び、体験する中、また一方でニューオーリンズのような貧富の差を見て、カリフォルニアでもいろんな「スタンフォード外」の一般人と話をする中、多少突拍子もないが、もう一度、日本の中堅中小企業がなんとなく実践しているような「ステークホルダーの利害をバランスさせる経営」のモデル化、見直しが必要な気がしてきている。
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私もスタンフォードではないですが、今MBAの最終段階に来ています。同じようにFinance関連科目を学ぶ中、企業の最大の目的は株主への還元最大化であるという理論には違和感を感じました。理屈としてはReasonableですが正論過ぎますね。正論では片付けられない世界中でおこっている事象の原因のひとつはこの理論に起因していると思います。バランスは大事ですね。この件は卒業後も企業人として追及したいテーマだと考えています。

2008.04.29 23:21 URL | YokoM #- [ 編集 ]

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2013.02.01 08:19  | # [ 編集 ]












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