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Stanford MBA 心の旅路

Stanford大学でのMBA(Stanford GSB)留学に奮闘する、外資系経営コンサルティング・ファーム勤務の若者の心の日記blog。 コンサルティングの仕事、MBA受験からスタンフォードGSB合格、スタンフォードMBA生活、帰国にいたるまで。

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1週間の中国出張を通じて、先日は衝撃を受けた「いい面」について書いてきた。今回は、出張を通じて感じた不思議な点、面白いと感じた点についていくつか書き記しておきたい。

中国の「いびつ」な就職事情
上海にて・・・高層ビル&伝統的建設物中国は、人余りだとも、人不足だとも言われる。大学生の卒業後の就職率は、なんと65%だと聞いた。一見人余りに見える一方で、中国では人材獲得競争が厳しく、人を確保するのが大変だという話も聞く。何が起こっているのか。

どうやら皆一人っ子政策のせいで、中国の大学生は親から過保護にされ、プライドが高く、親の期待も高いため、多くの大学生が卒業後はシステムエンジニアやサービス業への就職を希望するとのこと。コンピューターサイエンス学科や、たとえば日本が話せる中国人人材の就職率は、100%に近いという。都市や分野によって事情は異なる模様だが、たとえば日本語人材が豊富な大連では、日本語ができるシステムエンジニアなどは人材の供給数に限りがあるため、企業間で熾烈な学生獲得競争が展開されている模様。特にIBMなどが高い給与を出して中堅中小企業から育った人材を一気に引き抜いてしまうことが近年横行しているため、大学生に限らず、市場全体で人材の獲得競争が熾烈化している模様だ。お話を伺った中小企業の経営者は、逆に2,3名の鍵となるリーダー級人材に関しては、大企業よりも高い給与を出して大企業から逆に引き抜くようなことを始めている模様。そうでなければ、生き残れない、という社長さんのコメントには悲痛感が漂っていた。

上海にて一方、概してプライドが高く、親の財産を独り占めしてきた育ちのいい中国人大学生は、いわゆる3K的な仕事にはつきたがらないという。たとえば中国では現在建設ラッシュが激しく、建設現場の人材や、工場の労働者、またアウトソースビジネスも盛んで、給与計算の単純計算などの業務のニーズが大きいが、たとえばこれらの地味な業界へは誰も行きたがらないのだ。建設現場であれば、農村からの出稼ぎ労働者、工場やアウトソースビジネスであれば専門学校(3年生の大学)の卒業生などが人材として活躍している模様だ。その結果、大量の大学生が就職を希望している業界と、人材のニーズがミスマッチをしており、全体の就職率が低くなってしまっているというのだ。中国の大学、専門大学自体も、現在学生の就職斡旋にやっきになっており、企業と組んで、企業向けのカスタマイズした実践研修を最後の半年~1年間に行い、そのままその企業に採用してもらうなど、積極的な産学連携が進んでいる模様。

やはり、内需がしっかりと拡大し、国内のサービス産業が育成され、単純な労働力としての仕事ではなく、より高度な仕事が国内で拡大していかなければ、このミスマッチはなかなか収束しないのであろうか。また一方その単純労働の賃金も、以前書いたように毎年10%くらいの率で上昇を続けている。単純労働の受注でビジネスをやってきた韓国資本の企業の経営が立ち行かなくなり、近年韓国人の経営層が中国人スタッフを置いて夜逃げをしてしまう事件がいくつも起きており、中国では問題になっているという話も聞いた。これもまた、これまで「発展途上国」だった「安い中国」が、新しい段階に来ている一つの側面と見ることもできるかもしれない。

経済活動における、政府のあまりに強力な役割
上海にて中国に来てつくづく感じたのは、とにかく地元政府との良好な関係がビジネスの大きな成功要因であること。中国は、やはり、政府が強い。本当に、強い。上海で住民を退去させてあっという間にまっすぐの片側4車線の高速道路をまっすぐ引いてしまうことからもわかるように、政府の権限は強大である。ある時は、公害が問題になった業界の数十社が政府の判断によって一気に清算されてしまったり、逆に応援される企業は一等地をただ同然で払い下げられ、建物まで政府がたててくれるなど。

現在お世話になっている会社の中国子会社でも、地元政府との良好な関係が何よりもの強みになっている。地元の政府の市長と現在お世話になっている会長さんが、10年前からの仲で、会長は市の顧問もやっているし、中国側の子会社の社長は先日市議会議員にも指名された。このような関係は中国でビジネスをやっていく上で非常に大切で、現にうちの会社は政府から強力なバックアップを受け、現在使用している2棟のビルも家賃はただ同然、法人税も黒字化後3年はなし、その後も数年間通常の半額の税金ということだ。市や施設によってこういった措置は異なるが、こういった優遇措置のある施設に入れるのも、政府との良好な関係が必要である。逆にスタンフォードのビジネススクールで仲のいい韓国人の友人は、中国人への英語教育のベンチャーをやっていたが、ある時政府の人が突然やってきて、「今日から中国人以外はこの会社で仕事をやってはいけない。中国人のスタッフだけは継続して働いてもいいが、あなたはすぐにビジネスから出て行きなさい」と告げられ、結局会社の解散、中国系企業への従業員の提供をせざるをえなかったという。

とにかく、中国では経済発展のメインプレーヤーとして、政府がいる。そう、「メインプレーヤー」なのである。彼らの鶴の一声で企業は倒産もするし、膨大な利益も手にできる。市議会議員をやっているうちの会社の社長にも話を聞いてみたが、政府自体も、手探りでやっているんだと教えてくれた。成長がダイナミックでスピードが早いため、その都度状況を判断し、必要に応じて突然予告もなしに法律を変えることになるのだ。法律は、突然変わる。そして、いきなり企業活動が行き詰ってしまったりするのだ。ただ地元政府と普段から親しくしていれば、何が起こっているか、また何かが起こりそうかの雰囲気は伝わっているはずだという。

旅順港にて 昔ながら漁師製造業の発展、国民の富の底上げという側面では、日本でもそうであったように政府の強力なリーダーシップは不可欠だと思うが、一方でこの政府の強力なリーダーシップは政府の腐敗をも招いているという。貧富の差の拡大は続く一方で、共産党関係者、旧国営企業、都市住民は富み続ける一方、農村からの出稼ぎ者や、農村の人々は置いて行かれる一方である。お金持ちの方々の既得権益が強まる中、貧富の差の逆転はどんどん難しくなり、貧富の差が固定化してきてしまっているという。中国人の若い専門大学出身のスタッフの方に聞いたが、建設現場で働く出稼ぎ農民などは給与が支払われないことも多く、彼らの不満はどんどん大きくなっているという。彼らの怒りは、表だっては言えないが、実際は不正に富を得ている政府関係者や、それと癒着して儲けている企業たちへと向けられている模様。その中国の方は、外交問題(台湾や日本)はそのフラストレーションのはけ口として利用されている一面もあるのでは、とおっしゃっていた。

交通ルールを徹底する警察官もちろん、いい面もある。とある上海の観光名所では、赤信号なのに道路を渡ろうとする中国人を、警官が笛を鳴らして徹底して戒めていた。中国人は本当に交通ルールを守らない。お世話になっている会社の幹部も皆シートベルトは締めないし、平気で信号無視、歩道走行、車線の真ん中を走行、インディケーターなしでの車線変更などをする。その観光名所での警官は、人が一歩でも道路に足を踏み入れると、「ピー!!」と笛を鳴らして走り寄り、厳しく叱咤するということを繰り返していた。困惑して警官を見る人たち。五輪を前にして法律を守ろうという運動が盛り上がっている模様だが、こういった子供をしかるような指導手法に関しては、強力な政府ならではの徹底方法だなぁと興味深く見させてもらった。

ということで、素晴らしい皇帝が君臨している時代の帝国は素晴らしいだろうが、暴君が君臨した途端、国は恐怖政治に陥ったりする。中国における政府の強さというのは、経済活動においてもすさまじいものがある。それは決して悪いことと断定はできないが、癒着や腐敗の打破を含め、今後中国政府を悩ます課題も多いと感じた。

やりすぎ感&粗放さ
さて、最後に感じたこととしては、勢いのある国なので仕方ないとは言えるが、やりすぎ感と粗放さ。

やりすぎ感に関して言えば、たとえば街の街灯。無錫の高速道路では、ほとんどの道路の両脇に明るい街灯がついている。国土の狭い日本であるならともかく、ただっぴろい土地の中国でこれをやりだすとエネルギーの消費量は馬鹿にならない。アメリカでは高速道路は夜は本当に真っ暗である。反射板が道路についており、車のヘッドライトがあれば見えるからだ。また、無錫では道路を横切る歩道橋に、金未来的なLEDのイルミネーションがついていたり、ビルもまた金未来的にライトアップされていたりする。政府がガソリンを含むインフラ代を安く抑えているので、まずコスト感覚がないのだ。そしてエネルギー消費、環境問題に関する認識も低い。政府の政策が、企業の粗放なエネルギー消費、エネルギー非効率を作り出しているという批判を何度か聞いた。

そして中国では全面ガラス張りのビルが大流行りである。しかしこれが曲者。まず吹いてくる黄砂、工事の粉塵などで窓はあっという間に汚くなってしまう。それからエネルギー効率が非常に悪い。訪問した企業のいくつもが全面ガラス張りのビルに入っていたが、エアコンが効いていないと中はムシブロ状態である。瀋陽、大連、無錫、上海、蘇州とも、行った時の気温は37度から38度。昔はそれほど熱くなかったというが、温暖化と都市化現象の中で、ものすごい気温になっている。とある企業の経営者は、環境問題の指摘については、「先進国だけ発展しておいて、地球が持たないから自国で開発した環境技術を高く買えというのは筋が通っていない。中国は発展する権利がある」といったことをおっしゃっていたが、民間の方は多くがそういうマインドセットだろうから、これは中国政府こそがしっかり対応してほしい課題であると思う。成長が著しい時に、細かい(本当は細かくないが)環境問題、効率化の話を徹底するのは人々のマインドを削ぐし、難しい面があるのも理解する。ただ、将来のエネルギー枯渇問題、環境問題を原因とした国同士の争いの可能性などを考えると、中国にとってもエネルギー消費や環境問題の意識を民間に浸透させていくことは重要な点であると思う。

粗放さという点では、たとえば、ビルの造り。ぱっと見た感じはとてもきれいだが、よくよく見てみると、工事に粗さが目立ち、とくに内装など、よく見ると壁が見えていたり、数年しかたっていないのにタイルがはげていたり、質はよくない。ただ、これだけのスピートでものを作っていれば、それは仕方ないことでもあるだろう。それから、ホテルのサービスでも同様。無錫で泊まったホテルは、昔国営だったものが民営化されたもの。会長さん曰く、民営化されたことで一気に建物もきれいになったという。それは素晴らしいが、やはり粗放がいくつか。無錫のホテルにて (変な日本語訳・・・)民営化で収益を上げようと、部屋にはあやしいマッサージの広告が枕元に置いてあり、またベッドからはなぜかシャワールームがガラス張りで見えるようになっているのである。ホテルはすごく立派な造りなのに、目の前にネオンのギラギラした看板を建ててしまっている。それからロビーにあるマッサージの広告も、英語と日本語で通訳が書いてるのだが、また日本語がめちゃくちゃである。おそらくyahooか何かで直接自動翻訳したのだろうか。ある企業の日本人経営者とお話をした際にも、「中国は外国の技術を取り入れて、それをダイナミックに展開することには長けているが、実はまだ彼ら自身が本当にハイ・クオリティなものを作りあげる力というのは養われていない。」とおっしゃっていた。これだけの短期間で急激な成長をしているのだから仕方ないと思うが、確かに中国で走っている新幹線もリニアモーターカーも、決して彼らが作り上げたものではなく、日本やドイツなどから技術供与は受けつつも、購入したものである。もちろん急激に技術も吸収しようとしているのだろうが、まだまだ本当の高付加価値の技術という面では、彼らは未熟というのはその通りだろう。

以上、とりとめもなく、感じたことを書きなぐってみた。いろいろと課題もあるが、一言でいうと、中国は行く前に思っていたような「急成長の発展途上国」では既になくなってきているということ。まだまだの部分、不透明な部分は当然あるが、都市部での日本に迫る生活水準、そして13億人の人口と広大な土地を考えると、「もうここまで来たか」と、正直驚きを隠せない中国初体験であった。ただし、旅を通じて強く感じたのは、中国が「安い途上国」から「発展国」への転換期を迎えていること、それから政府の強すぎるリーダーシップとその副作用をどう将来考えていくか、そのあたりが将来の中国を考える上でのポイントかと感じた。

今回は都市部のみへの短い訪問だったので、次回訪れる際には、地方や伝統的な地域、農村も含めて訪れてみたい。
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