Stanford MBA 心の旅路

Stanford大学でのMBA(Stanford GSB)留学に奮闘する、外資系経営コンサルティング・ファーム勤務の若者の心の日記blog。 コンサルティングの仕事、MBA受験からスタンフォードGSB合格、スタンフォードMBA生活、帰国にいたるまで。

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選択科目の中で、Organizational Learningという科目を履修した。いかに組織が学んでいくか、いかに学べる組織を構築するか、といった授業であったが、その中でいろいろと普通の人が陥りがちな論理の綾についての講義があり、それが面白かった。いわゆる思考の罠で、いずれも組織や個人が学ぶ上で誤った学びをもたらしてしまう例として提示された。3つほど、興味深かったものを書いておきたい。

1.ベンチマーキングの罠
ベンチマーキングの罠ハイ・パフォーマンスの企業、競合などを研究し(ベンチマーキング)、彼らから学ぶというのは企業活動の中でよく行われることだが、その中で犯しがちな典型的な誤りについて。たとえば、ハイ・パフォーマンスの企業10社を研究し、その10社が共通するAという特徴・仕組みを持っていることを発見したとする。仮に自社がAという特徴、仕組みを持っていないとすると、パフォーマンスの差の一因はそのAの有無であろうと、Aを取り入れようとするケースがある。ただ、そこには罠がある。

簡単に言うとサンプル・エラーで、実は成功した企業10社に共通のAという特徴・仕組みは、成功していないその他の無数の企業にも頻繁に見られるものかもしれないのだ。仮に10社の中でAという特徴・仕組みが見られる可能性が80%だったとしても、実はAという特徴・仕組みを持っている企業の中で、成功している企業の比率というのは5%に満たないということは容易にありうる(図を参照)。

ではどうすればいいかというと、成功した企業と、成功していない企業を比較して、その差として見られる特徴・仕組みを検出する、または「成功」の定義をきちんと細かく(定量的に)定義し、その特徴・仕組みが具体的に(どのくらい)その成功に貢献しているかどうかを検証するなど、本当にAという特徴・仕組みが成功企業足り得るために必要な重要要素なのかを確認するアプローチが必要になる。また、よく言われる「correlationとcausationの混乱」というやつで、結果と原因を混乱してしまい、成功した結果、Aという特徴・仕組みが見られるだけなのか、Aという特徴・仕組みを持っていたからこそ成功したのか、という点を誤解しないようにすることが大切である。

2.企業の死角: 満足している現状の手段の背後で起こる、代替手段の改善
代替手段の改善多くの企業が学習に失敗する死角の例として、その企業が現在活用している(且つその企業が比較的満足している)手段より劣っていた代替手段が改善した際に、それを見落としがち、という点が挙げられる。多少複雑なので、同様に図を見てほしい。仮にX社がMという生産方式で市場において優位なポジションを築いていたとする。過去10年間、M方式のお陰で安いコストを実現できた。X社は現在のM方式に十分満足しており、それを磨き上げることを10年間続けてきた。ところが、その背後で市場のニーズが少しずつ変化しており、昔は全く見向きもされず、コストが何割も高かったS生産方式が、いくつかのキーとなる技術の進歩により、実はニーズにマッチした製品を安いコストで生産できるポテンシャルを持つに至っていた。そのような際、X社は現在活用している優秀な手段(M)よりも劣っていた代替手段(S)の改善には、非常に多くの場合気づかない。もちろん、気づいていても、スイッチングコスト等を勘案すると、黙殺してしまうケースも多いだろうが、新進気鋭のプレーヤーが、このようなチャンスをものにして業界の構造を変えたり、新しいスタープレーヤーとして躍り出ることはいくつも例がある。そこまで大胆な例でなくても、現在満足している手段の背後でひそかに起こる代替手段の改善には、多くの企業や人は長い間気づかず、機会損失を垂れ流してしまうケースが非常に多いという。

このようなものに気づくには、常にアンテナを張っていなければならないことになる。言うは易し、行うは難しで、現状成功していればしているほど、現状アプローチの改善・徹底にマインドシェアの大半を取られてしまうのは理解できる。ただ一方、そのような死角を理解し、どこかでひっくり返されないように死角に(できる限りの)神経をとがらせているかどうかで、このような機会損失を防ぐことができるかどうかが決まるのである。

3.動かせる要素を見過ごし、定数とみなしてしまう罠
定数を変数と見る最後は、複数要素を一緒に動かせば、よりよい結果が得られるのに、それに気づかず、または努力をせずに、よい結果を展望せずに終えてしまうという罠である。たとえば、自社だけでTという行動をすると、逆にリスクが高いだけで損をしてしまうが、その他の関係者のM社、Y当局、U社などを巻きんで一気に皆がTという行動をすれば、皆が一気に得をするというようなパターンである。普段定数だと思い込んでいるようなものも、仮に変数として考えてみて、全体でのパイの拡大、また自社の獲得分の最大化を考えるということである。

この授業も1週間の短期集中授業を履修したのだが、これ以外にもいろいろと興味深い視点や事例を提供してくれた、頭の体操にもよい面白い授業であった。
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クラス風景今学期、選択科目として1週間でのネゴシエーションの集中講義を受講した。月曜から金曜まで週5日間、毎日3時間の集中授業である。毎回、いろいろな演習をこなし、体験を通じてネゴシエーションの方法を学んでいく。

授業は選択科目で、かつ夕方6時から9時までの「夜間授業」だったため、10数人での和気あいあいとした少人数授業。みな2年目にもなるとすっかりリラックスし、エネルギーと、活発な発言と笑い(たまに怒り)が絶えない、これぞ選択科目といった雰囲気で授業が進む。毎日同じメンツと夜にあい、また事前にいろいろとグループでの準備もするので、集中的に一定のメンバーと仲良くなれる。集中講義形式の1つのメリットである。

コースを通じて学んだことは数多いが、2つだけ記しておくと、「交渉事の結果幅のダイナミックさ」と、「満足度が必ずしも成果に直結しない」という気づき。

「交渉事の結果幅のダイナミックさ」
たとえば授業の初日に行ったシンプルな交渉の演習では、ある工場の売却価格を、売り手と買い手で交渉させられた。工場の市場価格は不明確で、いつくか参考となる他社の工場の売却事例や、過去の市場価格、地価の変動データなどを頼りに、双方が交渉をする。

私は売り手側の役割を割り振られ、ジャーナリズムのPHDを専攻しているアメリカ人と交渉をすることになった。最初にケースを読んだ時点で、妥当な売却価格は300億円程度、ただ、正当化可能なもっとも高い価格は350億円程度だと考え、350億円を提示するところから交渉を始めることとした。結果、我々のチームは310億円前後で売買契約を結ぶことになり、私としては交渉も円満に有効的に進み、妥当価格より高い価格で妥結できたので非常に満足のいく交渉であった。ところが、全チームが集まり、他チームの交渉結果を見て愕然とした。

各チームの成果を見ると、なんと180億円から500億円まで、なんとも非常に大きなバラツキがあり、私の310億円は、平均よりも低い成果であることを知らされた。どのチームも350億円から300億円の間で推移するだろうと踏んでいた私は大きなショックを受けた。500億円で売りさばいた売り手と買い手、180億円で売ってしまった売り手と買い手に、それぞれどういう経緯で契約に至ったのかを授業を通じで聴いていくうちに、いかに交渉の結果幅というものが、交渉の手法、お互いの性格、状況によってダイナミックに変動するものかを知らされた。

「満足度は必ずしも成果に直結しない」
2点目が、交渉当事者の満足度は必ずしも成果に直結せず、それどころか、成果の邪魔にすらなる可能性があるという点。

演習にてセオリーでは、「妥当価格」に重点を置いて交渉する人は、交渉後の満足度は高いが成果は低く、アグレッシブな「ターゲット価格」に重点を置いて交渉する人は、交渉後の満足度は低いが、成果は高い。「妥当価格」に重点を置く人は、比較的道理にかなった良心的な交渉をし、相手との関係構築も円滑なため、有効的で、満足度の高い交渉プロセスを経験しがちである。また、「妥当価格」に重点を置くため、妥当価格より少しでも高い価格で契約できれば交渉は成功となり、本人は満足をすることとなる。一方、アグレッシブな「ターゲット価格」に重点を置く人は、交渉はタフになりがちなため、気まずい思いをすることもあるが、結果として高い価格で契約を結べることが多い。ただ、ターゲット価格からの譲歩を続けることになるため、本人の印象としては、「相手にたくさん譲歩した」という印象が形成され、満足度はさらに低くなる傾向がある。

実際の交渉では、今回の演習のように同じ交渉の結果を複数比較することはできないケースがほとんどだ。1度きりの交渉であるとすると、比較対象がないため、満足度は高いがポテンシャルを捉え切れていない交渉結果だったのか、満足度は低いが十分ポテンシャルをとらえきった交渉結果だったのか、なかなか判断する基準がないものである。その場合、多くの人は交渉後の満足度、また当初想定した価格と最終価格とのギャップで交渉の成否を判断しがちである。ところがすでに書いたとおり、もともとの想定価格が低ければ、有効的で円満な交渉を経験しつつ、実際はもっと高い価格で契約できたのに、想定価格より少し高い価格での契約に満足するといったことになりがちなのである。

相手との信頼関係や、長期的関係の有無、交渉の状況によって大きく異なるが、先により高い価格を提示したグループの方が、結果的には高い成果を得ることになるのである。

クラスでは、状況のパターン、交渉の種類によって、どのような交渉戦略が有効で、またどのようなことに気をつけないといけないのかなどを、演習形式によって解明していく。その中には、嘘と倫理、長期リレーションシップと短期的な成果、パイの拡大とパイの切り取り等々、興味深いテーマも多く、演習を通じてとても楽しく充実した1週間を過ごせた。日本での交渉においては、よりリレーションを全面に出した交渉スタイルが求められるかと思うが、交渉スタイルはスタイルとして、このような西欧的な交渉術、交渉セオリーを知っていて、かつそれを実験したことがあるかないかというのは、成果のバラツキの大きさを考えると、非常に大切なことだと感じた。また、交渉の様々なテクニックは、文字通り使うと陳腐になることもあるが、いずれも本質的なものを含んでいると実感したので、今後は生活のあらゆる小さな交渉の場で、いろいろと試しながら残りの生活を送っていきたい。
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